1807年、仏の数学者Joseph Fourierは当時目覚しい発展を続ける解析学において、とりわけ重大な、そして容易には受け入れ難い事実を発表します。フーリエ級数の発見です(有名な著書``熱の解析的理論''の発刊は1822年、Augustin-Louis Cauchyが当時の解析学の総決算と呼ぶべき著書``解析教程''をまとめたのは1821年のことです)。ヒルベルト空間に限定するなどの発想が無い当時、Fourierの手法は当然のことながら怪しげな技術として見做す数学者が多数存在しました。実際、収束性を議論していない式の項別積分に基づく彼の着想は、理論的には脆い基盤にありましたが、そういった冒険が世界を切り開いて来たことは歴史が教える通りです。
それではFourierはどのようにしてこの着想に至ったのでしょうか?
Fourierの取り組んでいた問題は、後の著書の題となるように熱の振舞いに関するものでした。ある均質な空間に初期状態として温度の分布が与えられたとき、任意の時間が経過すると分布はどのようになっているか?特に空間の境界に対して条件を課すことから、初期値-境界値混合問題と言われます。簡単の場合に述べますと、密度がρ、比熱をc、熱伝導率をkとする長さπの鉄棒が、時刻t=0において位置xの温度をf(x)として与えられた時、時刻0<tについてu(x,t)を求めよ、但しu(0,t)=u(π,t)=0とする、というものでした。ここで密度・比熱・熱伝導率を定数とし、k=cρとなるよう定めると、次のような問題となります。
当時、常微分方程式の解法については既によく知られていた為、Fourierはまずとして変数を分離した関数X(x)とT(t)に分けて考えました。これを元の偏微分方程式に代入するとことで、次のような線形斉次な微分方程式を得ます。
両辺がそれぞれ独立した変数の関数であることから、これは定数であることが分かります。これをλとしまし。そこで関数X(x)を求めることから始めます。
X(x)の一般解から次のようなλを求めれば良いことが分かります。
自明な場合を除けばλはとなるはずですから、オイラーの公式を使いを得ます。よってλはとなり、定数はという関係にあります。関数X(x)が求まりました。
次に、求まったλを使って関数T(t)がと求まります。以上から問題の個々の解は次の関係に従うことになります。
ここで問題の偏微分方程式および境界条件の線形性より、任意の解の重ね合わせで元々の関数は表現出来るはずだと考えます。
次に初期条件を考えることで、個々の解を実現する定数Cnを定める問題へと帰着することが出来ます。最終的な問題は次の通りです。
この問題を解く為に、Fourierは初めオイラーの手法を用いてx=π/2での展開を考えます。
ところが当時の技術ではこれによる定数の決定に困難が伴いました。またx=π/2という設定は、本来の問題を十分に満足させるものでもありません。試行錯誤の中でFourierは、両辺にをかけ、それを積分するという着想を得ます。
正弦波の特性としてという関係に注目したFourierは、この形から項別の積分を定めることが出来ると思い付いたわけです。そして次のように定数を決定しました。
to be continued..
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