Kurds claim responsibility for oil line black(FT.com)
バクー・トビリシ・ジェイハン(Baku-Tbilisi-Ceyhan)パイプラインでクルド系武装組織によると思われる火災が発生、アゼルバイジャンからトルコ・中央アジア諸国に石油を輸送するパイプラインが停止した。グルジア軍が南オセチア自治区に進行したのはこの二日後である。
Georgia pulls out of South Ossetia(FT.com)
ロシアのエネルギー戦略は複数の計画から構成されているが、災禍の中心にあるグルジアは黒海に面した要所であると同時に、BTCパイプラインというロシア非管轄のパイプラインが通る国である。この近隣諸国で最も重要なポイントが、アゼルバイジャンの有するカスピ海の石油基地であり、先のチェチェン紛争後ロシアが固くなに内政を主張して査察を拒んだ理由も少からずアゼルバイジャンからの石油輸送路確保にあったであろう。またこの土地の魅力はロシアに限ったものではない。ドイツやイタリアをはじめ西欧諸国も、これまで外交的手段の上でパイプラインを実現しようと試みてきた。そして当該国にとってこの地理は、資源輸送と貿易の拠点によって経済的な発展を遂げるために掛替えの無い宝なのだ。
THE ENERGY DIMENSION IN RUSSIAN GLOBAL STRATEGY(filetype:pdf)
プーチンの論文を再確認するまでもなく、これまでの、そしてこれからのロシアにとってエネルギー戦略は生命線であり、石油・天然ガスパイプラインの秩序を一手に担うことがロシアのレゾンデートルとなっている。陸路ではエレツからウクライナを抜けハンガリーへと至るラインや、ポーランドへ抜けるラインが存在するが、これらの諸国では料金の不払いが多発、また防衛上もアメリカの支援が際立っており、決して採算性の良いものとは云えない。海路では、ヴィボルグから北欧の領海を通り欧州へと供給されるNord Stream、黒海経由でトルコへの伸びるBlue Stream、黒海を横断しブルガリア経由でイタリアへ伸びるSouth Stream(開発中)などがある。問題はアゼルバイジャンおよびトルクメニスタンに埋蔵されている資源の輸送である。未だ所有者の明確にならない計画では、カスピ海を横断してアゼルバイジャンとトルクメニスタンを繋ぎ、カザフスタン経由でロシアへと輸送するTrans Caspianが存在する。しかしアゼルバイジャンとトルクメニスタンとの対話は現在進行形であり、ロシアはこの計画に否定的である(正確には、チェチェンからアゼルバイジャンを直接結びたいのだろう)。そしてこの状況につけ入っているのがアメリカである。
BTC Pipeline(Wikipedia)
チェチェン共和国への経済支援を行なっていたロシアが金融危機に陥り、ルーブルの下落が起った頃、査察団の受け入れと援助が行なわれた。時を同じくして出たニュースが、アメリカ支援の下にトルコ・グルジア・アゼルバイジャンを繋ぐBTCパイプラインである。グルジア軍の進行に対するロシアの姿勢は、この状況に対する明確な行動であろう(或いはクルド系武力組織の裏に誰が居ただろう)。ブッシュ米大統領が任期を満了しつつある事、ポーランドへの米防衛ミサイル配備計画などが緊張を高めている事、(South Streamの拠点である)ノヴォロシスクの重要度が増しチェチェンよりグルジア経路が現実味を増した事、中国の圧倒的な需要拡大とアゼルバイジャン・トルクメニスタンラインによる中央アジア市場の(ロシアからの)別離、エネルギー価格の高騰に伴う許容されるコスト水準の上昇、オリンピックの開催、一時に場に出ないカードが偶然にも揃ってしまうという事態を、プーチンはこれまでも見せ、そしてくぐり抜けて来た。ロシアとアメリカの対立はより一層熾烈なものとなるのかもしれない。
back numbers
8.11.2008
7.04.2008
Poland missile base
Tentative deal for US missile base in Poland (Financial Times)
今年初頭から長く議論の続いていた、ポーランドにアメリカのミサイル防衛装備を10基配備するという取引が、いよいよ締結される模様である。
ポーランドという国は政治的にはロシアに対して明確な姿勢を強いてはいるものの、実質的な防衛面では圧倒的に不利な地理にある。たとえEU諸国が支援しようとも、被害が直接的に最も早く集中することは目に見えている。その中でアメリカの防衛構想に組するというのであれば、なおさらロシアからの圧力を感じないわけがない。既にロシアは天然ガスのパイプラインをポーランド主軸ではなくカスピ海から中東経由で行うというプランも立てている。
一方のアメリカは次期大統領に政権が移る前にこの条約を結ぶ必要があった。条約の詳細は明らかにされていないが、ポーランド側の決して安くはない要求額を呑んだことだろう。早ければ翌週には、訪欧予定のCondoleezza Riceが条約を締結する見込みである。次期大統領候補の一人Barack ObamaはBill Clinton同様に対外政策では強気に出るはずがない、少なくとも民主党は年間で$110億のミサイル防衛予算に対してかなり懐疑的な意見を持っているからだ。
今年初頭から長く議論の続いていた、ポーランドにアメリカのミサイル防衛装備を10基配備するという取引が、いよいよ締結される模様である。
ポーランドという国は政治的にはロシアに対して明確な姿勢を強いてはいるものの、実質的な防衛面では圧倒的に不利な地理にある。たとえEU諸国が支援しようとも、被害が直接的に最も早く集中することは目に見えている。その中でアメリカの防衛構想に組するというのであれば、なおさらロシアからの圧力を感じないわけがない。既にロシアは天然ガスのパイプラインをポーランド主軸ではなくカスピ海から中東経由で行うというプランも立てている。
一方のアメリカは次期大統領に政権が移る前にこの条約を結ぶ必要があった。条約の詳細は明らかにされていないが、ポーランド側の決して安くはない要求額を呑んだことだろう。早ければ翌週には、訪欧予定のCondoleezza Riceが条約を締結する見込みである。次期大統領候補の一人Barack ObamaはBill Clinton同様に対外政策では強気に出るはずがない、少なくとも民主党は年間で$110億のミサイル防衛予算に対してかなり懐疑的な意見を持っているからだ。
6.30.2008
ロマンを追う男
これはかつて旧日本海軍の二等航海士だった御人から窺った話である。その歳を考慮してみれば幾らか事実とは異なるのかもしれない。しかし民間で航海士を務めた他の方からもある程度は同意があったという事は前もって補足しておこう。
古くから船乗りは男であった。そして今も基本的にはそうである。というのはそれが大変効率的であるからだ。恐らくこれは誤解を呼ぶ点であるから説明する必要があるだろう。たとえば大型船における何かしら(操船なり機関室なり)の船員資格を取る事に男女の区別は無い、しかし実務に際してチームが組まれることは非常に稀有なのだ。海に居る限り産休は無いからである。また狭い空間に装備を敷き詰めた船内に、男女の区別を要する設備もまた贅沢なのだ。海という自然と向き合っている限り万事が万事であり人の都合は存在しない。怪我人が出ようが港には戻れない。そこは純化されたリアリズムの支配する世界なのである。
自然と対峙する為のリアリズム、これが海の仕事を司る行動原理である事は想像に難くない。その中にあっては人は船を機能させる歯車の一つでなければならない。どんなに人間関係が悪かろうとも、港を離れる準備が始まれば分担に従って速やかに行動する。これを律するために階級が存在し、上に立つ者の裁量が試される。昨今の日本船舶の船員は外国人を雇う場合が多いそうだが、一昔前は刺青を入れた者が多かったそうである。休憩中に甲板を散歩していれば突然後ろから殴りかかられることもある、特に上官は。そこで上官が示さねばならないのは力なのだそうだ。この人には逆らわない、信頼できる、という
護衛艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事案
船乗りにとってこの海域は
しかし本当の問題は、船乗りの技術や意識の低下にあるという。その昔、船舶は移動や流通の生命線でありまた防衛行動の明確な表現であった。政府からは手厚い待遇が保証される、と同時に高い精度と質が求められた。つまり優秀な貧乏人が出世する手段は海に出ることだったのである。ところが今や旅行や小型貨物は飛行機が中心となり、船舶の出番は資源輸送くらいしかない。自由経済が謳歌を始めると、資源輸出入企業はより柔軟にコスト削減に乗り出す。出来るだけ安いタンカーを、出来るだけ安い航法装置を、出来るだけ安いスタッフを。そうやって生まれた利益の大部分は陸上で契約書を取りまとめる人間とトレーダーに集中する。船乗りの質が低下するのは自明といえるだろう。
こういってはなんだが、今後も海の仕事の価値が向上することは難しいだろう。海上油田やその運搬については改善される可能性が多いにあろうが、それ以外のほとんどの海の仕事の未来は暗い。その分いまの日本は何に力を注いでいるのだろう、という疑問がふっと頭を過ぎるのだった。
古くから船乗りは男であった。そして今も基本的にはそうである。というのはそれが大変効率的であるからだ。恐らくこれは誤解を呼ぶ点であるから説明する必要があるだろう。たとえば大型船における何かしら(操船なり機関室なり)の船員資格を取る事に男女の区別は無い、しかし実務に際してチームが組まれることは非常に稀有なのだ。海に居る限り産休は無いからである。また狭い空間に装備を敷き詰めた船内に、男女の区別を要する設備もまた贅沢なのだ。海という自然と向き合っている限り万事が万事であり人の都合は存在しない。怪我人が出ようが港には戻れない。そこは純化されたリアリズムの支配する世界なのである。
自然と対峙する為のリアリズム、これが海の仕事を司る行動原理である事は想像に難くない。その中にあっては人は船を機能させる歯車の一つでなければならない。どんなに人間関係が悪かろうとも、港を離れる準備が始まれば分担に従って速やかに行動する。これを律するために階級が存在し、上に立つ者の裁量が試される。昨今の日本船舶の船員は外国人を雇う場合が多いそうだが、一昔前は刺青を入れた者が多かったそうである。休憩中に甲板を散歩していれば突然後ろから殴りかかられることもある、特に上官は。そこで上官が示さねばならないのは力なのだそうだ。この人には逆らわない、信頼できる、という
無保証な信用を獲得するためには、力を力でねじ伏せ、言葉は言葉で論破する器が求められる。そうやって築かれる階級のピラミッドが、嵐や違法な連中などから荷を守りぬき、船員たちを安全に帰宅させることを可能にする。
護衛艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事案
船乗りにとってこの海域は
操船の腕が試される難しい領域だそうである。自衛艦(またかつては旧日本海軍)などの大型船舶の航路上は排出物の影響で魚が集まりやすい。そのため多くの漁船は大型船舶の航路上(!)に網をかけて漁をするのである。常識的に考えれば漁船の非常識さが目立つわけだが、彼らには彼らの生活がかかっているし、そのおかげで喰えているのは内地の人間なのだから、大型船舶乗りにとってこれを避けるために操船技術を駆使する事は常識だったのだそうだ。これを考えれば、作業中の漁師は(漁自体非常に忙しい作業なので)船舶の接近に気付く余地は無いし、また護衛艦の航法装置が漁船のような小さな対象を回避するわけもなく、起こるべくして起こった事故であると云うよりあるまい。当然ながら乗船していた自衛隊員の過失である。だが犯罪は言い過ぎにも程がある。
しかし本当の問題は、船乗りの技術や意識の低下にあるという。その昔、船舶は移動や流通の生命線でありまた防衛行動の明確な表現であった。政府からは手厚い待遇が保証される、と同時に高い精度と質が求められた。つまり優秀な貧乏人が出世する手段は海に出ることだったのである。ところが今や旅行や小型貨物は飛行機が中心となり、船舶の出番は資源輸送くらいしかない。自由経済が謳歌を始めると、資源輸出入企業はより柔軟にコスト削減に乗り出す。出来るだけ安いタンカーを、出来るだけ安い航法装置を、出来るだけ安いスタッフを。そうやって生まれた利益の大部分は陸上で契約書を取りまとめる人間とトレーダーに集中する。船乗りの質が低下するのは自明といえるだろう。
今後も日本で海の事故は増えるでしょうね。悲しい限りです
こういってはなんだが、今後も海の仕事の価値が向上することは難しいだろう。海上油田やその運搬については改善される可能性が多いにあろうが、それ以外のほとんどの海の仕事の未来は暗い。その分いまの日本は何に力を注いでいるのだろう、という疑問がふっと頭を過ぎるのだった。
6.26.2008
サンクチュアリ
Medvedev: Graft is security risk (BBC)
国内の汚職問題を言及したメドヴェデフ大統領。外国人記者とは初となるインタビューで、プーチン前大統領との姿勢の違いを述べた。もし二人の間に軋轢があるのであれば北の大地の変化を感じないでもないが、少なくとも現時点では基本的にプーチン政権の最終段階のように受け取られても仕方あるまい。それは表の顔=メドヴェデフ、裏の顔=プーチンによるサンクチュアリである。
Transcript of Medvedev Interview (Moscow Times)
穏やかな語り口ではあるものの、メドヴェデフ大統領の狙いは諸外国との協調を通したロシア経済のグローバル化、もっと云えば帝国化にあるのではないかと感じさせるものがある。エネルギー市場の活性化を狙い半ば野放しとなった産業界に対して、プーチンは徐々に法整備と市場の健全化へとステージを移して来た。その最たる現れが、メドヴェデフへの政権交代だろう。商品価格の高騰はエネルギー大国ロシアにとって外国資本の移動を加速する。その流れにあってなお、経済原理に思想を明け渡すことはしないだろう。
Chubais hits at EU ‘fear’ of Gazprom (Financial Times)
インフレ傾向が強まるEUはガスプロムにとって重要な市場である。世界需要が中国・インドに傾いている中、EU加盟国が天然ガスの供給量を拡大したいのは間違いないだろう。しかし一方で、加盟国間で収支のバラつきが顕著になってきているEUは簡単に市場の自由度を増やすわけにもいかず苦しい状況にあると云える。かつて急速に経済が立ち上がった国で起こった悲劇のように、自由経済は適切な法整備と制限の補助レールが必要なのだ。果たしてガスプロムの制限解除要求をどの時点で飲むのか。
Gazprom Eyes Partners in Korea, Japan (Moscow Times)
サハリン2の計画見通しについて、韓国・日本に対して説明が行われた。予てより大幅な遅れと費用の増大からロシア経済(及び海外からの投資)のネックと看做されていたサハリンプロジェクトは、早ければ年度末から日本への天然ガス輸出を実現する見込みだと報じた。さらにウラジオストック近辺に第二のプラントを立上げ、韓国へのLNGの提供を計画するらしい。韓国への提供となると問題になってくるのは北朝鮮である。アメリカとの関係に注視しつつというありがちな表明にも、プーチンとの二強体勢では何か奥の手があるのではないかと疑わずには居れない。
BP in standoff with Russian partners (Financial Times)
イギリスとロシアの合弁という形で設立したTNK-BPはいま株主争いが過熱している。設立当時から持ち分の明確化が叫ばれていた会社だが、ここひと月の紛争は泥沼化しつつある。そして大統領就任後はじめてこの件にメドヴェデフ大統領が明言した。法遵守を訴えた声明の中には、メドヴェデフという存在がロシア政府のどのような構造にあるのかを感じさせるものがあるだろう。またパートナーを正しく選ばなければならないだろうというメッセージが、就任直後にプーチンと舞台に並んだ二人の姿を連想させるのである。
国内の汚職問題を言及したメドヴェデフ大統領。外国人記者とは初となるインタビューで、プーチン前大統領との姿勢の違いを述べた。もし二人の間に軋轢があるのであれば北の大地の変化を感じないでもないが、少なくとも現時点では基本的にプーチン政権の最終段階のように受け取られても仕方あるまい。それは表の顔=メドヴェデフ、裏の顔=プーチンによるサンクチュアリである。
Transcript of Medvedev Interview (Moscow Times)
穏やかな語り口ではあるものの、メドヴェデフ大統領の狙いは諸外国との協調を通したロシア経済のグローバル化、もっと云えば帝国化にあるのではないかと感じさせるものがある。エネルギー市場の活性化を狙い半ば野放しとなった産業界に対して、プーチンは徐々に法整備と市場の健全化へとステージを移して来た。その最たる現れが、メドヴェデフへの政権交代だろう。商品価格の高騰はエネルギー大国ロシアにとって外国資本の移動を加速する。その流れにあってなお、経済原理に思想を明け渡すことはしないだろう。
Chubais hits at EU ‘fear’ of Gazprom (Financial Times)
インフレ傾向が強まるEUはガスプロムにとって重要な市場である。世界需要が中国・インドに傾いている中、EU加盟国が天然ガスの供給量を拡大したいのは間違いないだろう。しかし一方で、加盟国間で収支のバラつきが顕著になってきているEUは簡単に市場の自由度を増やすわけにもいかず苦しい状況にあると云える。かつて急速に経済が立ち上がった国で起こった悲劇のように、自由経済は適切な法整備と制限の補助レールが必要なのだ。果たしてガスプロムの制限解除要求をどの時点で飲むのか。
Gazprom Eyes Partners in Korea, Japan (Moscow Times)
サハリン2の計画見通しについて、韓国・日本に対して説明が行われた。予てより大幅な遅れと費用の増大からロシア経済(及び海外からの投資)のネックと看做されていたサハリンプロジェクトは、早ければ年度末から日本への天然ガス輸出を実現する見込みだと報じた。さらにウラジオストック近辺に第二のプラントを立上げ、韓国へのLNGの提供を計画するらしい。韓国への提供となると問題になってくるのは北朝鮮である。アメリカとの関係に注視しつつというありがちな表明にも、プーチンとの二強体勢では何か奥の手があるのではないかと疑わずには居れない。
BP in standoff with Russian partners (Financial Times)
イギリスとロシアの合弁という形で設立したTNK-BPはいま株主争いが過熱している。設立当時から持ち分の明確化が叫ばれていた会社だが、ここひと月の紛争は泥沼化しつつある。そして大統領就任後はじめてこの件にメドヴェデフ大統領が明言した。法遵守を訴えた声明の中には、メドヴェデフという存在がロシア政府のどのような構造にあるのかを感じさせるものがあるだろう。またパートナーを正しく選ばなければならないだろうというメッセージが、就任直後にプーチンと舞台に並んだ二人の姿を連想させるのである。
6.19.2008
大いなる不確定要素
Putin Threatens New Power Players (Moscow Times)
資源政策は現在のロシアにとって生命線と云っていい。国民を付き従え、その道を突き進んできたのはウラジミール・プーチンである。先日のエネルギー会談に際してプーチンは「無責任な行動をとる投資家には真っ向から対抗する」と明言している。資源を取り巻く世界的な状況と、内需の拡大に伴い、ロシア国内のエネルギー資源は市場調整的側面と国策的側面が共に際立つという危うい存在となるだろう。世界諸国はこれを少なからず戦々恐々としながら見ている。
THE ENERGY DIMENSION IN RUSSIAN GLOBAL STRATEGY(filetype:pdf)
プーチンは熱烈な愛国心の保持者であるそうだ。その彼が大統領時代に推し進めてきた政策の中心的なテーマはこの論文で示されている。軍事ではなく、資源戦略によるロシアの発展。石油会社が国有化されていた頃、エリツィン大統領はこれを解体し市場整備への一歩を踏み出した。その当時、プーチンの論文がエリツィンの目に留まったのだ。当初エリツィン政策を支持・支援し、資本家達に歩み寄って資源市場の自由化を進めたプーチン大統領は、手のひらを返したように資本の政府による統制を始める。そして市場化による外国資本の導入と、税制による制限とを巧みな手腕で使い分け、ロシア経済の拡大を実現させていった。その最終的な段階 (BBC)が、現メドヴェデフ大統領への政権交代直前に達成されたのだった。
資源政策は現在のロシアにとって生命線と云っていい。国民を付き従え、その道を突き進んできたのはウラジミール・プーチンである。先日のエネルギー会談に際してプーチンは「無責任な行動をとる投資家には真っ向から対抗する」と明言している。資源を取り巻く世界的な状況と、内需の拡大に伴い、ロシア国内のエネルギー資源は市場調整的側面と国策的側面が共に際立つという危うい存在となるだろう。世界諸国はこれを少なからず戦々恐々としながら見ている。
THE ENERGY DIMENSION IN RUSSIAN GLOBAL STRATEGY(filetype:pdf)
プーチンは熱烈な愛国心の保持者であるそうだ。その彼が大統領時代に推し進めてきた政策の中心的なテーマはこの論文で示されている。軍事ではなく、資源戦略によるロシアの発展。石油会社が国有化されていた頃、エリツィン大統領はこれを解体し市場整備への一歩を踏み出した。その当時、プーチンの論文がエリツィンの目に留まったのだ。当初エリツィン政策を支持・支援し、資本家達に歩み寄って資源市場の自由化を進めたプーチン大統領は、手のひらを返したように資本の政府による統制を始める。そして市場化による外国資本の導入と、税制による制限とを巧みな手腕で使い分け、ロシア経済の拡大を実現させていった。その最終的な段階 (BBC)が、現メドヴェデフ大統領への政権交代直前に達成されたのだった。
フランスの防衛体制
Knowledge holds the key to French defence (Financial Times)
フランスが防衛と国家安全保障を統合するとのこと。運用での柔軟な、悪く言えば非論理的な判断を嫌うフランスの国民性が現れているような方針だ。ルールを周知させそれに従う。変更が必要なら抜本的な改革を行う。なるほどPrologでコーディングをしていると、動的な変更が現れるプログラムはバグを生みやすいが、構造の変化を一時に集約するとバグはかなり回避出来る。
しかし防衛と国家安全保障が統合と聞くと世界大戦を連想してしまう。おそらくこの感覚は、それが対処する敵の構造の類似によるものだろう。大戦時の敵はむろん敵国であり敵の思想であったわけだが、その活動拠点は国外は当然として、国内の潜伏組織にある。これと戦う為に防衛が国家安全保障と情報を共有し連動する必要がある、という状況はそのまま現在の我々が直面している敵に置き換えても云えるのだ。だがこれは国策捜査を助長することにはならないのだろうかという心配がある。ましてや自由の国フランスである。いや或いは、フランスだからこそ自由に伴う責任を強く理解しているのかもしれない。
フランスが防衛と国家安全保障を統合するとのこと。運用での柔軟な、悪く言えば非論理的な判断を嫌うフランスの国民性が現れているような方針だ。ルールを周知させそれに従う。変更が必要なら抜本的な改革を行う。なるほどPrologでコーディングをしていると、動的な変更が現れるプログラムはバグを生みやすいが、構造の変化を一時に集約するとバグはかなり回避出来る。
しかし防衛と国家安全保障が統合と聞くと世界大戦を連想してしまう。おそらくこの感覚は、それが対処する敵の構造の類似によるものだろう。大戦時の敵はむろん敵国であり敵の思想であったわけだが、その活動拠点は国外は当然として、国内の潜伏組織にある。これと戦う為に防衛が国家安全保障と情報を共有し連動する必要がある、という状況はそのまま現在の我々が直面している敵に置き換えても云えるのだ。だがこれは国策捜査を助長することにはならないのだろうかという心配がある。ましてや自由の国フランスである。いや或いは、フランスだからこそ自由に伴う責任を強く理解しているのかもしれない。
6.18.2008
形勢
Kissinger and Blair Warn of Conflict (Moscow Times)
ロシアの大統領メドヴェデフはかつて、そして今なおプーチンの強い協力者であると見られている。その彼をして、現ロシア政権がプーチン政権から変わるとは考え難いだろう。プーチンの極めて計画的で攻撃的な政策の展開は、ある意味では偉大な成功を収めた。そして資源問題の占めるウェイトが増える程、この国はより強いイニシアティブを持っていくこととなる。東欧から中東に渡る大きなヴェールの向こうには、これまで我が物顔で発展の道を闊歩してきた西欧やアジア諸国を戦慄させる資源と人と社会とが存在している。イスラエルロビーに強固なチャンネルを持っているプーチン政権が、多くの点で有利な立ち位置に居るのである。
Lithuanian ban on Soviet symbols
第二次世界大戦からこちら、リトアニアの歴史はまさに激動の一部である。他の東欧諸国に先駆ける形でソヴィエト連邦と離別し、欧州連合に加盟した。ここにはリトアニアの決意が見て取れる。そしてシンボルの使用制限という意思表示だけに留まらず、より明確な行動に出たのである。防衛という形で。
US enters missile talks with Lithuania
ワシントンが進めるミサイル防衛計画は、リトアニア領に配備できる10基の迎撃装置により大きく前進することになるだろう。冷戦が終わってもなお、合衆国連邦にとっての脅威は東欧から中東にかけての領域、そしてその少し先の部分にある。リトアニア-インド-日本、このトライアングルが如何なる意味を持つののか、推して知るべしである。
ロシアの大統領メドヴェデフはかつて、そして今なおプーチンの強い協力者であると見られている。その彼をして、現ロシア政権がプーチン政権から変わるとは考え難いだろう。プーチンの極めて計画的で攻撃的な政策の展開は、ある意味では偉大な成功を収めた。そして資源問題の占めるウェイトが増える程、この国はより強いイニシアティブを持っていくこととなる。東欧から中東に渡る大きなヴェールの向こうには、これまで我が物顔で発展の道を闊歩してきた西欧やアジア諸国を戦慄させる資源と人と社会とが存在している。イスラエルロビーに強固なチャンネルを持っているプーチン政権が、多くの点で有利な立ち位置に居るのである。
Lithuanian ban on Soviet symbols
第二次世界大戦からこちら、リトアニアの歴史はまさに激動の一部である。他の東欧諸国に先駆ける形でソヴィエト連邦と離別し、欧州連合に加盟した。ここにはリトアニアの決意が見て取れる。そしてシンボルの使用制限という意思表示だけに留まらず、より明確な行動に出たのである。防衛という形で。
US enters missile talks with Lithuania
ワシントンが進めるミサイル防衛計画は、リトアニア領に配備できる10基の迎撃装置により大きく前進することになるだろう。冷戦が終わってもなお、合衆国連邦にとっての脅威は東欧から中東にかけての領域、そしてその少し先の部分にある。リトアニア-インド-日本、このトライアングルが如何なる意味を持つののか、推して知るべしである。
5.27.2008
アフリカ開発会議
TICAD IV
1993年より5年ごとに開催されているアフリカ開発会議(TICAD)の第4回が開催される。綺麗なお題目はともかくとして、日本側はアフリカ諸国の民主化支援を通して、国連常任理事国拡大の支持を、アフリカ諸国はODAと外交的なチャンネルの確保を、双方が望んで始まったことは明らかであろう。
国連常任理事国の改革案については、拡大以外にも幾つかある。が、何れにしてもポイントは隣国が敵対したときのセーフティネットである。その観点からすれば、日本政府にとってのホットスポットは、大韓民国および中華人民共和国との関係にあるのだから、アフリカを外交的な持駒とすることはそれほどメリットがあるとは思えない。だが今や、日本はアフリカという土地に別の可能性を見出すことが出来るだろう。ODAではない、アフリカ経済圏の支援、つまり民間企業進出の支援である。
一方アフリカも、一過的な経済支援だけではなく、持続的な改善が必要であった。それはつまり、一方的な教育支援ではなく、新たな土壌を開拓することが出来る体力作りである。自分達で問題に取り組み、解決して行ける状況が教育の最終的な段階であり、それこそ、先進各国が教育を重要政策に加える理由である。有史以来、長期的な国の発展を確実にしてきたまともな手段と言えば、教育くらいしか無かったからである。だがしかし、教育水準がその段階に至るためには、人口がより密集した、それでいて安全な地域を確保する必要がある。騎士物語時代のヨーロッパのように、手紙で意見交換をしたり、工房で文明の利器を作って社会が変動する時代では無いのである。
第1回の開催に際して、細川総理(1993年当時)は演説で次のように述べている。
総理の演説 -TICAD I-
お定まりの政治的スピーチだと捉えられなくもないが、私はこれが寧ろ最も問題を突いていると思えてならない。アフリカ諸国が抱える根本的な課題は、それが48の諸国に過ぎず、さらに言えばアフリカ全土で上げられる僅かなGDPが、大半は南アフリカ共和国一国のものだという事実だ。人が散け過ぎているのである。ユーロに続きアフリカ諸国がアフリカゾーンとなる日は訪ずれるだろうか。
1993年より5年ごとに開催されているアフリカ開発会議(TICAD)の第4回が開催される。綺麗なお題目はともかくとして、日本側はアフリカ諸国の民主化支援を通して、国連常任理事国拡大の支持を、アフリカ諸国はODAと外交的なチャンネルの確保を、双方が望んで始まったことは明らかであろう。
国連常任理事国の改革案については、拡大以外にも幾つかある。が、何れにしてもポイントは隣国が敵対したときのセーフティネットである。その観点からすれば、日本政府にとってのホットスポットは、大韓民国および中華人民共和国との関係にあるのだから、アフリカを外交的な持駒とすることはそれほどメリットがあるとは思えない。だが今や、日本はアフリカという土地に別の可能性を見出すことが出来るだろう。ODAではない、アフリカ経済圏の支援、つまり民間企業進出の支援である。
一方アフリカも、一過的な経済支援だけではなく、持続的な改善が必要であった。それはつまり、一方的な教育支援ではなく、新たな土壌を開拓することが出来る体力作りである。自分達で問題に取り組み、解決して行ける状況が教育の最終的な段階であり、それこそ、先進各国が教育を重要政策に加える理由である。有史以来、長期的な国の発展を確実にしてきたまともな手段と言えば、教育くらいしか無かったからである。だがしかし、教育水準がその段階に至るためには、人口がより密集した、それでいて安全な地域を確保する必要がある。騎士物語時代のヨーロッパのように、手紙で意見交換をしたり、工房で文明の利器を作って社会が変動する時代では無いのである。
第1回の開催に際して、細川総理(1993年当時)は演説で次のように述べている。
我が国は、開発が「人」に始まり、「人」に終わるとの自らの経験を踏まえて、アフリカにおける人造りを積極的に支援して参ります。(中略)
即ち、アフリカ諸国政府の努力、活力あるアフリカ民衆の参加、そしてそれを支える援助国及び国際機関の支援という三本の矢があれば、
総理の演説 -TICAD I-
お定まりの政治的スピーチだと捉えられなくもないが、私はこれが寧ろ最も問題を突いていると思えてならない。アフリカ諸国が抱える根本的な課題は、それが48の諸国に過ぎず、さらに言えばアフリカ全土で上げられる僅かなGDPが、大半は南アフリカ共和国一国のものだという事実だ。人が散け過ぎているのである。ユーロに続きアフリカ諸国がアフリカゾーンとなる日は訪ずれるだろうか。
5.23.2008
ミニマムアクセス米の行方
貿易ルールに詳しい者ならご存知の通り、日本は毎年一定量の米を、たとえ不必要であっても、ミニマムアクセス(以下MA)として輸入している。いまなお世界的に加熱している商品価格の高騰、わけても東南アジア諸国での米価格の高騰に対して、日本政府はこのMAから20万トンの提供を呼びかけた。なおこの件に関してシーファー駐日米大使は「歓迎する」とのコメントを寄せた、と日経の記事にはある。
日本の米支援、米大使歓迎(日経オンライン)
さて、今日のNY Timesの記事を見てみよう。
U.S. in Difficult Position Over Japan’s Rice Plan(NYT)
どうやら外交筋とは違い、連邦政府の広報は強い口調で談話を求めているようだ。実際、この米支援が実体経済にどれほど影響するのかは明らかではない一方、対米貿易について議論を呼ぶことは確実だろう。米国が日本に輸出する米はMAの2/3を占めており、日本がこれを再輸出することに関してこれまでも強く規制してきたという事実がある。そして何より、米国が農作物についても大国であり、これらの輸出収益は連邦に取って決して軽く見れるものではないということだ。
先日から騒がれている通り米国議会では、農家に対し補助金を与えることを含めた新農業法案が下院を通過した。実態を無視し、富裕農家に補助金をばら撒くような行為だとしてブッシュ大統領は拒否権を発動したが、下院はこれを賛成票316で覆した。上院も既に票は押さえているとの見込みである。
果たして今回の日本政府の発表は、どの辺りに主眼が置かれているのか。
日本の米支援、米大使歓迎(日経オンライン)
さて、今日のNY Timesの記事を見てみよう。
U.S. in Difficult Position Over Japan’s Rice Plan(NYT)
どうやら外交筋とは違い、連邦政府の広報は強い口調で談話を求めているようだ。実際、この米支援が実体経済にどれほど影響するのかは明らかではない一方、対米貿易について議論を呼ぶことは確実だろう。米国が日本に輸出する米はMAの2/3を占めており、日本がこれを再輸出することに関してこれまでも強く規制してきたという事実がある。そして何より、米国が農作物についても大国であり、これらの輸出収益は連邦に取って決して軽く見れるものではないということだ。
先日から騒がれている通り米国議会では、農家に対し補助金を与えることを含めた新農業法案が下院を通過した。実態を無視し、富裕農家に補助金をばら撒くような行為だとしてブッシュ大統領は拒否権を発動したが、下院はこれを賛成票316で覆した。上院も既に票は押さえているとの見込みである。
果たして今回の日本政府の発表は、どの辺りに主眼が置かれているのか。
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